あたり前に もしバナの ある 世界
あたり前に もしバナの ある 世界
私たちiACPは、もっと多くの人々がつながり、共感し、わかちあえる世界を目指して、新たな一歩を踏み出します。
その意思表明としてiACPの正式名称を変更致しました。
この問いは誰にとっても避けられないという意味で「平等」なものです。ゲームの共に己に向き合うプロセスは「連帯」を感じられる体験でもあリます。シンプルだが難しいこの問いのもと、もしバナゲームは多くの人々に愛されてきました。
もしバナゲームは、これまでその体験を通じて多くの人々を結ぶ架け橋となってきました。また様々な価値観に耳を傾ける体験から視座が増し、人々にしなやかさを与えてくれる可能性もみえてきました。
元気なうちから「もしも」を考えたり話したりする。それ自体にどんな意味があるのか。大切な気もするけれど、本当に必要なのかはよく分からない。数年前までは私もそう思っている一人でした。
自分や大切な誰かの「もしも」を考え話し合うこと。2013年に医療者や地域に住む方々と「アドバンス・ケア・プランニングを考える」活動を始めて以来、これまでたくさんの方々の「もしも」に対する思いや考え方、価値観に触れてきました。その過程で私自身も少しずつ変わってきています。
私たちの日常において、「もしものこと」、いわゆる「縁起でもないこと」を話す機会はとても限られています。誰もが、なんとなくその類の話を避けて通っているうちに、時間は過ぎていきます。
いつ、誰と、どんなことを話し合えばいいのか。その話し合いに意義を感じるかどうかは人それぞれです。一様にアドバンス・ケア・プランニングを推奨するわけではなく、この「もしも」を考え話し合う意義を地域の方々と一緒に考える、それが私たちの活動の原点です。
私たちのプログラムやこれからの活動が、病の有無や年代・職種に関わらず、多くの方にとって「今をより大切に生きる」、そのためのきっかけになれば幸いです。
iACP代表理事
蔵本 浩一
私たちは普段、周りのみんなも同じように考えているに違いないと思いがちです。でも実際に生や死について話し合ってみると、その捉え方や価値観はほんとうに十人十色です。
一方で、とても共感できる素晴らしい思いや在り方に出会うこともあります。「縁起でもない」とされがちな生や死について話し合うとき、私たちは人と「ちがうこと」と「一緒なこと」があることに気づきます。そして、どうやらみんな「平等に不確実」らしいということもわかってきます。
もちろん、縁起でもない話なんてしたくない、という選択も尊重されるべきです。でも生きていること自体の不確かさ、言い換えれば「等しく、予想することが難しい未来」と対峙していると感じられた時、もしかするとはじめて、穏やかに自分自身の在り方を考えられるのかもしれません。
ほんとうに大切なものは、とても身近なところにありそうです。縁起でもない話の先にあるもの。それは、不確かな世界にためらいつつも、そこに佇む一人ひとりの価値観や思い、在り方そのものです。言葉にして、話し合うことで、あたりまえの日常が少しだけ変わるとしたら、とても素敵なことではないでしょうか。
iACP理事
原澤 慶太郎
多くの医療介護従事者と同じく、私も訪問診療の日々のなかで意思決定支援の一端を担っています。患者さんの意向に沿うために、状況に照らして治療方針や療養場所を探っていく毎日です。しかし、時には真夜中に自宅に赴き、急いで話し合わなければならないこともあります。
良かれと思った治療方針が過剰医療や治る見込みのない延命治療となり、却って本人を苦しめることなってしまう、これを避けることは必要です。しかし、それとは逆に、必要な治療を安易に差し控えてしまうのは本末転倒です。
ですから、話し合いのプロセス Advance Care Planningをなるべく早い時期から行っていくことが良いと考えられています。話し合いを通して丁寧に共通の基盤を創っていくことが、人生の最終段階 のみならず、より良く生きていくことに繋がるのではないかと考えています。
ただし、その時になってみなければわからない、もしもの時のことなど考えずに生きることを大切にしている方もいます。
もちろん考えない権利もありますし、意思決定では様々なバイアスがあることが知られてもいますから、Advance Care Planningを行わなければいけないというわけではありません。
私たちiACPの活動では、まだ自分の受ける医療や死を意識することが少ない若い世代も輪に入っていただいています。世代間でのコミュニケーションを促進することは、地域のストレスを軽減することになるかもしれません。
地域社会が個々の命の物語を尊重して送り出す、それを次世代に引き継いでいく。そんなことが今以上にあたりまえになっている未来のために、医療の立場から少しでも役に立てればと考えています。
iACP理事
大川 薫